室内の二酸化炭素(CO2)濃度は、1,000ppm以下を目安にしてください。これは建築物衛生法(ビル管法)が定める管理基準値です。学校の教室では1,500ppm以下が望ましいとされています。屋外の空気が約415〜450ppmなので、それを大きく上回っているほど「換気が足りていない」状態だと考えてください。
この記事では、CO2モニターのメーカーとして、濃度の目安を法令と研究データの出典つきで整理します。ネット上でよく見かける「濃度別の症状表」の扱い方についても、正直にお伝えします。
室内のCO2濃度を測るなら
個人のお客様・1台のご購入は Amazon が最短です。複数台・設備連動のご相談はフォームからどうぞ。
まず押さえておきたい3つの数字
細かい表を見る前に、この3つだけ覚えておけば大半の判断ができます。
| 数値 | 意味 | 根拠 |
|---|---|---|
| 約415〜450ppm | 屋外の空気のCO2濃度。測定器が正しく動いているかの基準にもなる | 経済産業省「二酸化炭素濃度測定器の選定等に関するガイドライン」 |
| 1,000ppm | 室内の管理基準。これを超えたら換気する | 建築物衛生法(建築物環境衛生管理基準) |
| 5,000ppm | 労働環境での上限。通常の居室ではまず到達しない | 事務所衛生基準規則 第三条/日本産業衛生学会 許容濃度 |
「1,000ppmを超えたら窓を開ける」。実務上はこれだけでほぼ足ります。残りは、なぜその数字なのか、そして自分の部屋が今いくつなのかをどう知るか、という話です。
室内CO2濃度の目安 早見表
濃度帯ごとに、どういう場面で出る値なのかを添えました。数字だけ見ても実感が湧かないためです。
| 濃度 | 状態 | こういう場面で出る値 | 取るべき行動 |
|---|---|---|---|
| 〜450ppm | 屋外とほぼ同じ | 窓を全開にした直後、屋外 | 何もしなくてよい |
| 450〜700ppm | 良好 | 換気が効いている部屋、在室者が少ない | この状態を保てれば理想的 |
| 700〜1,000ppm | 上昇してきている | 人が集まりはじめた部屋、閉め切って1〜2時間 | 換気の準備をする |
| 1,000〜1,500ppm | 管理基準を超過 | 会議室に数人で30分〜1時間、閉め切ったリビング | 換気する |
| 1,500〜2,500ppm | 明らかに換気不足 | 締め切って寝た寝室の朝方、満席の飲食店 | すぐに換気し、運用を見直す |
| 2,500〜5,000ppm | かなり高い | 窓がない部屋に多人数・長時間 | 換気設備そのものを見直す |
| 5,000ppm超 | 労働環境の上限を超過 | 通常の居室ではまず起きない | 原因の特定が必要(設備の異常など) |
この表の「状態」欄は、あくまで法令の基準値を軸にした区分です。1,001ppmになった瞬間に体調が悪くなる、という性質のものではありません。ただし1,000ppmを超えているということは、その部屋の空気が呼気で置き換わりつつあるということで、換気量が足りていない客観的な証拠になります。
法令ではどう決まっているのか
「室内のCO2は1,000ppm以下」という数字は、実は施設の種類によって変わります。3つの法令を押さえておけば、ほとんどの施設をカバーできます。
| 法令 | CO2の基準 | 対象 |
|---|---|---|
| 建築物衛生法(ビル管法) | 1,000ppm以下 | 特定建築物(延べ面積3,000㎡以上の事務所・店舗など/学校は8,000㎡以上) |
| 学校環境衛生基準 | 1,500ppm以下が望ましい | 学校(幼稚園〜高等学校等) |
| 事務所衛生基準規則 | 一般:5,000ppm以下 空調設備がある場合:1,000ppm以下 |
すべての事務室 |
建築物衛生法(ビル管法)— 1,000ppm以下
正式には「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」。特定建築物の所有者・管理者に対して、建築物環境衛生管理基準の遵守を義務づけています。空気環境については7つの項目が定められており、CO2はそのひとつです。
| 項目 | 基準値 |
|---|---|
| 二酸化炭素 | 1,000ppm以下 |
| 一酸化炭素 | 6ppm以下 |
| 浮遊粉じん量 | 0.15mg/㎥以下 |
| 温度 | 18℃以上28℃以下 |
| 相対湿度 | 40%以上70%以下 |
| 気流 | 0.5m/秒以下 |
| ホルムアルデヒド | 0.1mg/㎥以下 |
このうち温度と一酸化炭素は2022年(令和4年)4月に改正され、温度は「17℃以上」から「18℃以上」に、一酸化炭素は「10ppm以下」から「6ppm以下」に厳しくなりました。古い資料には旧基準が載っていることがあるので注意してください。CO2の1,000ppmは据え置きです。
なお、これらの測定は2か月以内ごとに1回実施することが定められています。逆に言えば、その間の実態は測っていなければ分かりません。
学校環境衛生基準 — 1,500ppm以下が望ましい
学校保健安全法にもとづく文部科学省告示です。教室等の環境について、CO2は「1,500ppm以下であることが望ましい」、温度は「18℃以上、28℃以下であることが望ましい」とされています。
この基準は令和8年(2026年)2月27日の文部科学省告示第35号で改正されています。学校関係の資料を参照する際は、改正後のものかどうかを必ず確認してください。
事務所衛生基準規則 — 5,000ppm以下/空調があれば1,000ppm以下
労働安全衛生法にもとづく厚生労働省令で、建物の規模にかかわらず、すべての事務室が対象です。ここが見落とされがちなポイントで、「うちは3,000㎡未満だからビル管法の対象外」という事業所でも、事務所則は適用されます。
- 第三条(換気):窓その他の開口部を床面積の1/20以上確保する。それが難しい場合は換気設備を設ける。室内のCO2は5,000ppm以下、一酸化炭素は50ppm以下
- 第五条(空気調和設備等による調整):空調設備や機械換気設備を設けている場合、供給空気のCO2は1,000ppm以下、一酸化炭素は10ppm以下。気流は0.5m/秒以下。室温18〜28℃、相対湿度40〜70%になるよう努める
つまり、エアコンや機械換気が入っているオフィスは、実質1,000ppmが基準と考えてください。
1,000ppmを超えると何が起きるのか
ここが一番知りたいところだと思います。ただし正直に書くと、「CO2が◯ppmになると◯◯という症状が出る」と断定できるほど、この分野の研究は揃っていません。そのうえで、比較的しっかりした条件で行われた研究を2つ紹介します。
1,000ppmで意思決定のスコアが下がった実験
米ローレンス・バークレー国立研究所らのグループが2012年に発表した研究です。22名の被験者に、CO2濃度をそれぞれ約600ppm・1,000ppm・2,500ppmに調整した部屋で意思決定のテスト(Strategic Management Simulation)を受けてもらい、スコアを比較しました。
- 1,000ppm:9つの評価尺度のうち6つで、中程度かつ統計的に有意な低下
- 2,500ppm:7つの尺度で、大きく統計的に有意な低下
研究者自身が「CO2が意思決定にこれほど直接的な影響を与えたことは予想外だった」と述べ、追試の必要性に言及しています。1本の研究で結論が出る話ではありませんが、1,000ppmという水準がすでに影響の出はじめる領域かもしれないという示唆にはなります。
CO2が400ppm増えるごとにスコアが21%下がった
ハーバード大学らによる2016年の研究(COGfx study)です。24名の被験者が、環境を制御したオフィス空間で6日間(9時〜17時)実際に働きながら認知機能テストを受けました。
- 従来型オフィス条件に比べ、換気を強化した「Green」条件(CO2約945ppm)では認知機能スコアが61%高い
- さらに換気量を倍にした「Green+」条件(CO2約550ppm)では101%高い
- 全体として、CO2が400ppm増えるごとにスコアが平均21%低下
この研究はCO2だけでなく換気量とVOC(揮発性有機化合物)も同時に変えているため、「CO2だけの影響」とは言い切れません。ただし少なくとも、換気が足りない部屋で頭が働きにくくなるという体感には、それなりの裏づけがあるということです。
ネットでよく見る「濃度別の症状表」について
「2,000ppmで頭痛」「3,000ppmで肩こり」といった濃度別の症状表を見かけることがあります。こうした表は出典が明示されていないものが多く、辿っていくと元の資料に行き着かないことがしばしばあります。当社としては、そういう表を根拠に不安を煽ることはしたくないと考えています。
はっきりした数字として示せるのは、労働衛生分野の許容濃度です。
| 指標 | 数値 | 意味 |
|---|---|---|
| 日本産業衛生学会 許容濃度 | 5,000ppm | 1日8時間・週40時間程度の労働で、健康影響がみられないとされる濃度 |
| ACGIH TLV-TWA | 5,000ppm | 時間加重平均としての上限 |
| ACGIH TLV-STEL | 30,000ppm | 短時間ばく露の上限 |
一般的な住宅やオフィスで数万ppmに達することは、まずありません。日常の室内環境で気にすべきは1,000〜3,000ppmの帯域であり、そこは「危険かどうか」ではなく「快適か、集中できるか、換気設備が機能しているか」を判断する範囲だと捉えるのが実態に合っています。
自分の部屋が何ppmかを調べる方法
スマートフォンでは測れません
「二酸化炭素濃度 測定 アプリ」で検索される方が多いのですが、スマートフォンにCO2センサーは搭載されていません。アプリ単体で濃度を測ることは原理的にできません。測定には専用の測定器が必要です。
ただし、Wi-Fi対応のCO2モニターであれば、測定した値をスマートフォンのアプリで外出先から確認することはできます。「スマホで見たい」というニーズは、この形で満たすことになります。
測定器を選ぶときの2つの条件
経済産業省が2021年11月に公表した「二酸化炭素濃度測定器の選定等に関するガイドライン」では、検知原理として光学式(NDIR方式など)であること、そして補正機能を搭載していることが求められています。安価な製品のなかには、CO2センサーを搭載しておらず、他のガスの検知結果からCO2濃度を推定して表示しているものもあります。
正しく測れているかを確かめる3つの方法
同ガイドラインでは、測定器の動作確認方法として次の3つが案内されています。手持ちの測定器が信用できるかどうか、すぐに確かめられます。
- 屋外に持ち出す:415〜450ppm程度を示すか。大きく外れていれば疑わしい
- 息を吹きかける:数値が大きく上昇するか。反応しなければCO2を測っていない可能性がある
- 消毒用アルコールを近づける:異常な数値変化がないか。アルコールに反応して数値が跳ね上がる製品は、CO2以外のガスに反応している
測ってみると、部屋の実態が分かります
個人のお客様・1台のご購入は Amazon が最短です。複数台・設備連動のご相談はフォームからどうぞ。
濃度が高いと分かったらどうするか
CO2を下げる方法は「換気」だけです
室内のCO2濃度を下げる手段は、外の空気と入れ替えること以外にありません。屋外が約415〜450ppmなので、外気を入れればその値に近づいていきます。
空気清浄機やエアコンでは下がりません
空気清浄機は粒子やにおいを除去する装置で、CO2を吸着したり分解したりする機能はありません。エアコンも、室内の空気を循環させて温度を変えているだけで、外気を取り込んでいるわけではないものが大半です(換気機能つきの機種を除く)。空気清浄機を運転しながらCO2モニターを見ていると、数値がまったく動かないことが確認できます。
窓は2ヶ所開ける
1ヶ所だけ開けても空気の通り道ができず、入れ替わりが進みません。対角線上の2ヶ所を開けるのが基本です。窓が1つしかない部屋では、部屋のドアを開けて廊下側との空気の道をつくると効果が上がります。
窓が開けられない場合
高層階のオフィスや、窓のない会議室では、機械換気に頼るしかありません。この場合、換気設備が実際に効いているかどうかはCO2濃度を測らないと分かりません。設備は動いているのに濃度が下がらない、というケースは珍しくありません。在室人数に対して換気量が足りていない、給気口がふさがれている、フィルターが目詰まりしているなど、原因はさまざまです。
よくある質問
室内の二酸化炭素濃度はどのくらいが快適ですか?
1,000ppm以下を目安にしてください。建築物衛生法の管理基準が1,000ppm以下、学校環境衛生基準では1,500ppm以下が望ましいとされています。屋外は約415〜450ppmです。
二酸化炭素濃度が2,000ppmを超えるとどうなりますか?
ただちに健康被害が出る濃度ではありませんが、法令の管理基準(1,000ppm)を大きく超えており、換気量が明らかに不足している状態です。研究では1,000〜2,500ppmの範囲で認知機能テストのスコア低下が報告されています。まずは換気をしてください。
寝室のCO2が朝に高くなるのはなぜですか?
就寝中は窓を閉め切っていることが多く、そこに人が数時間いれば呼気でCO2が蓄積していくためです。締め切った寝室では朝方に2,000ppmを超えることも珍しくありません。就寝前の換気、ドアを少し開けておく、24時間換気を止めない、といった対策が有効です。
植物を置けばCO2は下がりますか?
実用的な効果は期待できません。光合成によるCO2の吸収量は、人ひとりが呼吸で出す量に比べてごくわずかです。また夜間は植物も呼吸をします。観葉植物は別の理由で置く価値はありますが、換気の代わりにはなりません。
測定器は何台くらい必要ですか?
部屋ごとに1台が基本です。同じフロアでも、在室人数や給気口からの距離によって濃度は変わります。まず1台で実態を把握し、必要に応じて増やしていく進め方でも問題ありません。オフィスや施設で複数台をご検討の場合は、設置場所の選定も含めてご相談ください。
まとめ
- 室内のCO2濃度は1,000ppm以下が目安。学校は1,500ppm以下が望ましい
- 屋外は約415〜450ppm。測定器が正しいかの確認にも使える
- 空調・機械換気のあるオフィスは、事務所衛生基準規則により実質1,000ppmが基準
- 1,000〜2,500ppmで認知機能テストのスコア低下を報告した研究がある
- 出典の不明な「濃度別の症状表」は鵜呑みにしない
- CO2を下げる方法は換気だけ。空気清浄機やエアコンでは下がらない
- まずは測ってみること。数字が出ると、換気のタイミングを迷わなくなる
参考にした資料
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」/建築物衛生のページ
- 文部科学省「学校環境衛生基準」(令和8年2月27日 文部科学省告示第35号 改正)/学校環境衛生
- 厚生労働省「事務所衛生基準規則」(昭和47年労働省令第43号)/条文
- 経済産業省「二酸化炭素濃度測定器の選定等に関するガイドライン」(2021年11月1日)
- Satish U, et al. “Is CO2 an Indoor Pollutant? Direct Effects of Low-to-Moderate CO2 Concentrations on Human Decision-Making Performance.” Environmental Health Perspectives 2012;120(12):1671-1677.
- Allen JG, et al. “Associations of Cognitive Function Scores with Carbon Dioxide, Ventilation, and Volatile Organic Compound Exposures in Office Workers.” Environmental Health Perspectives 2016;124(6):805-812.
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト「二酸化炭素」/日本産業衛生学会 許容濃度、ACGIH TLV