CO2モニター(二酸化炭素濃度計)は、室内の二酸化炭素濃度を測って表示する機器です。CO2濃度は人の呼気で上がるため、「その部屋の換気が足りているか」を判断する指標になります。
選ぶときに見るべきポイントは、突き詰めると2つです。光学式(NDIR方式)であることと、補正機能があること。経済産業省のガイドラインでも、この2点が要件として挙げられています。この記事では、なぜその2つなのかを仕組みから解説します。
NDIRデュアルビーム方式のCO2モニター
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CO2モニターとは何をする機器か
室内の二酸化炭素濃度をppm(parts per million、100万分の1)という単位で測り、数値やLEDの色で表示します。多くの機種は温度・湿度も同時に表示します。
屋外の空気のCO2濃度は約415〜450ppmです。ここに人が入って呼吸をすると、部屋のCO2濃度は上がっていきます。窓を開けたり換気設備を動かしたりして外気と入れ替えれば、また下がります。
つまりCO2濃度は、「この部屋の空気が、どれだけ人の呼気で置き換わっているか」を数値化したものです。においや体感では分からないこの状態を、目に見える形にするのがCO2モニターの役割です。
なぜCO2を測るのか
「空気の汚れ」を測る指標はほかにもあります。粉じん、VOC、PM2.5など。そのなかでCO2が換気の指標として使われるのには理由があります。
- 発生源が人に限られるため、在室状況をそのまま反映する。粉じんのように外から入ってくる要素が少ない
- 屋外の値がほぼ一定(約415〜450ppm)なので、基準線が明確
- 換気すれば必ず下がる。対策と結果の因果関係が分かりやすい
- 法令で基準値が定められている。建築物衛生法1,000ppm以下、学校環境衛生基準1,500ppm以下
空気清浄機ではCO2は下がりません。CO2を下げる方法は換気だけです。だからこそ、CO2の数値は「換気が足りているか」を一対一で示す指標になります。
センサー方式の違い
ここが製品選びで最も差が出る部分です。
NDIR方式(非分散型赤外線吸収方式)
CO2が特定の波長(4.3μm付近)の赤外線を吸収する性質を利用した方式です。センサー内部で赤外線を照射し、どれだけ吸収されたかから濃度を逆算します。
CO2そのものの物理的性質を直接測っているため、他のガスの影響を受けにくく、測定値の信頼性が高いのが特長です。経済産業省のガイドラインが求める「光学式」の代表がこのNDIR方式です。
シングルビームとデュアルビーム
NDIR方式のなかにも差があります。
| シングルビーム(単一波長) | デュアルビーム(単光源二波長) | |
|---|---|---|
| 測定の考え方 | CO2が吸収する波長だけを見る | CO2が吸収する波長と、吸収しない参照波長の両方を見て比較する |
| 経年変化への強さ | 光源の劣化やレンズの汚れが、そのまま誤差になりやすい | 参照波長と比べるため、劣化や汚れの影響を打ち消せる |
| 長期安定性 | 定期的な補正への依存度が高い | 高い |
デュアルビーム方式は、光源そのものが弱ってきたりレンズにホコリが付いたりしても、参照波長の値も同じだけ変化するため、比を取ることで影響を相殺できます。長く使う機器ほど、この差は効いてきます。
光音響方式(PAS)
赤外線を吸収したCO2がわずかに膨張し、その圧力変化を音として検出する方式です。小型化しやすい一方、外部の振動や騒音の影響を受ける場合があります。経産省ガイドラインでは光学式のひとつとして扱われています。
要注意:CO2センサーを積んでいない製品
ここが最大の落とし穴です。安価な製品のなかには、CO2センサーそのものを搭載していないものがあります。VOC(揮発性有機化合物)センサーで検知した値から、CO2濃度を推定して表示しているタイプです。「eCO2(equivalent CO2=等価CO2)」と表記されることもあります。
この方式は、アルコールなどの揮発性物質に強く反応します。消毒用アルコールを近くで使っただけで数値が跳ね上がる、といった挙動になります。換気の判断には使えません。
選び方 5つのチェックポイント
| 見るところ | 目安 | |
|---|---|---|
| 1 | センサー方式 | 光学式(NDIR方式など)であること。デュアルビームならなお良い |
| 2 | 補正機能 | 搭載していること。経産省ガイドラインの要件 |
| 3 | 測定範囲と精度 | 室内用途なら0〜5,000ppm程度。精度は明記されているか(例:±80ppm) |
| 4 | 表示と警報 | 離れて見えるか。色や音で知らせるか。数値を読まなくても判断できるか |
| 5 | 電源と設置 | 常設ならUSB給電が扱いやすい。卓上か壁掛けか |
1. センサー方式
仕様表に「NDIR方式」「非分散型赤外線吸収方式」と書かれているかを確認してください。方式の記載がない製品は、記載しない理由があると考えたほうが安全です。
2. 補正機能
CO2センサーは、使っているうちに測定値がずれていきます。補正機能があれば、そのずれを修正できます。多くの機種は、一定期間内の最低値を屋外相当(約400ppm)とみなして自動補正するABC(Automatic Baseline Correction)を備えています。
ただしABCは「その部屋が定期的に外気並みまで下がること」を前提にしています。24時間人がいる部屋や、まったく換気されない部屋では、この前提が崩れて逆にずれが生じることがあります。手動補正ができる機種を選び、取扱説明書に従って運用してください。
3. 測定範囲と精度
室内環境の管理が目的なら、0〜5,000ppmの範囲があれば十分です。重要なのは精度が仕様として明記されているか。「±80ppm(0〜2,000ppm)」のように、誤差と、その誤差が保証される濃度範囲がセットで書かれているのが望ましい形です。
4. 表示と警報
見落とされがちですが、実務では効きます。数値だけの表示だと、誰かが見に行かないと気づけません。3色LEDで状態を示すタイプなら、部屋にいる全員が視界の端で判断できます。飲食店や教室のように「見る担当者がいない」場所ほど、色表示の価値が上がります。
5. 電源と設置
常設するならUSB給電(ACアダプター付属)が扱いやすく、電池切れの心配もありません。壁掛けに対応していると、机の上を占領せず、測定に適した高さに設置できます。
買ったあとにできる、粗悪品の見分け方
経済産業省のガイドラインでは、測定器の動作確認方法として次の3つが案内されています。手元にある機器が信用できるかどうか、道具なしで確かめられます。
- 屋外に持ち出す
415〜450ppm程度を示せば正常です。屋外で800ppmや200ppmを示すなら、その機器の値は信用できません - 息を吹きかける
数値が大きく上昇すれば、CO2に反応しています。ほとんど動かないならCO2を測っていない可能性があります - 消毒用アルコールを近づける
数値が跳ね上がる製品は、CO2ではなくVOCに反応しています。換気の判断には使えません
この3つ、特に1番目は購入直後に必ず試してみてください。
設置場所で数値は変わります
正しい機器を選んでも、置き場所を間違えると意味のない数値になります。
| 避けるべき場所 | 理由 |
|---|---|
| 給気口・窓のすぐ近く | 外気が直接当たり、部屋の実態より低く出る |
| 人の顔のすぐ前 | 呼気が直接かかり、極端に高く出る |
| エアコンの吹き出し口の直下 | 気流の影響を受ける |
| 直射日光が当たる場所 | 温度表示が実態とずれる |
基本は部屋の中央付近、床上75〜150cm程度の高さです。これは建築物衛生法における空気環境測定の測定位置と同じ考え方で、人の呼吸域に近い高さで測るという趣旨です。
当社が扱っているCO2モニター
ディー・エス・アイでは、シー・エイチ・シー・システム製の「マーベル」シリーズを取り扱っています。ここまで挙げた条件を満たす機種です。
| 項目 | マーベル001 | マーベル003 |
|---|---|---|
| センサー方式 | NDIR方式/2波長デュアルビーム | |
| 測定範囲 | 0〜5,000 ppm | |
| 測定精度 | ±80 ppm(0〜2,000 ppm) | |
| 表示 | CO2濃度・温度・湿度/セミワイド3.9インチ | |
| LED表示 | 緑(800ppm未満)/黄(800〜999ppm)/赤(1,000ppm以上) | |
| アラーム | 1,000ppm超過で作動(ミュート機能付き) | |
| データ記録 | なし | 内蔵データロガー |
| 電源 | DC5V/USBケーブル・ACアダプター付属 | |
「その場で換気タイミングを知りたい」なら001、「記録を残して分析・報告したい」なら003という選び分けになります。
まず1台、置いてみるところから
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よくある質問
スマホアプリでCO2濃度は測れますか?
測れません。スマートフォンにCO2センサーは搭載されていないため、アプリ単体で濃度を知ることは原理的にできません。ただしWi-Fi対応のCO2モニターであれば、測定した値をスマートフォンで外出先から確認できます。
NDIR方式とはどういう意味ですか?
Non-Dispersive InfraRed(非分散型赤外線吸収方式)の略です。CO2が特定波長の赤外線を吸収する性質を利用し、吸収された量から濃度を求めます。CO2そのものの物理的性質を直接測る方式です。
安いCO2センサーとの違いは何ですか?
センサー方式が最大の違いです。数千円の製品のなかには、CO2センサーを搭載せずVOCセンサーの値から推定表示しているものがあります。屋外に持ち出して415〜450ppmを示すか、消毒用アルコールに反応しないかを確かめれば、その場で判別できます。
校正は必要ですか?
多くの機種は自動補正機能を備えているため、日常的な使用で校正作業が必須になることは通常ありません。ただし精度が要求される用途や、換気のない環境で長期間使う場合は、定期的な確認と手動補正をおすすめします。取扱説明書の指示に従ってください。
1部屋に何台必要ですか?
基本は1部屋1台です。同じフロアでも、在室人数や給気口からの距離で濃度は変わります。オフィスや施設で複数台をご検討の場合は、設置場所の選定を含めてご相談ください。
まとめ
- CO2モニターは、換気が足りているかを数値で示す機器
- 選ぶ条件は光学式(NDIR方式)であることと補正機能があることの2つ
- NDIRのなかでもデュアルビーム方式は、経年劣化や汚れの影響を打ち消せる
- CO2センサーを積まず、VOCから推定表示している製品に注意
- 買ったら屋外で415〜450ppmを示すかを必ず確認する
- 設置は部屋の中央付近、床上75〜150cm。給気口や人の顔の前は避ける
参考にした資料
- 経済産業省・産業用ガス検知警報器工業会「二酸化炭素濃度測定器の選定等に関するガイドライン」(2021年11月1日)
- 厚生労働省医薬・生活衛生局「建築物の空気環境に係る定期測定・点検について」(測定位置に関する記述)
- シー・エイチ・シー・システム「マーベル001/マーベル003」製品仕様